
1. 剣士
その剣は深緑の肌の化け物を切り裂いた。
青い血が剣をつたいぽたりと地面に落ちる。
あっという間にそれを吸い尽くした地面の部分は、少し青くなった。
男は大ぶりの剣をぶんと振り、それについた化け物の血を払ってから
鞘に収めた。
男は化け物を踏みつけ、右を見た。
瞳を凝らすその視線の先には、うす青く発光しているかのように見える、
古めかしいような、新しいような、巨大な城が存在している。
「さすがに、生き残っておるのか?」
男はつぶやくように言った。
沈みかけの太陽が空に浮かぶ雲を朱に染める中、城へと足を進めた。
堅く閉ざされた門の前に二人の衛兵が居た。
「まったく物騒な世の中になったもんだな」
「まったくだ。大魔王なんてなぁ 誰かが作った昔話だと思ってた
のになぁ」
そんな会話を交わす二人の目前には、ねずみ色のトカゲのような肌を
持つ小動物が金切り声を上げている。その目はほんの少しだが赤く
光っていた。小型だが化け物の一種である。
それを見る二人の間には恐怖のかけらも無いようだ。
突然それは衛兵の一人をめがけて、勢い良く飛びかかる。
しかしその化け物は薄青い壁にぶつかり、そして燃えて消えた。
「ここが、クリアテラン王国の王城で良かったもんだ」
襲いかかられかけた衛兵が、平気という顔で言った。
「確かに。ここには国王直属の魔法騎士団がいるものな。
おかげでこの[青き聖霊の結界]に守られているというわけだ」
「この結界の前では、あのような小物なぞ物の数ではないし、
ここの騎士団の力を知ってか、大物もあまり寄り付かない」
気が緩んでいる衛兵の前、その薄青い壁から人の右手が出てきた。
「これは、、、結界の一種か?」
そう言うと一人の男がその体をずいっと侵入させる。
それに気づいた衛兵は、突然現れた男とその行動に少し驚いた。
「何者か?」
門の右よりに立つ衛兵が声をあげた。
「門を開けい」
男はそう言い放った。
衛兵は腰につけていた剣の束に手をかけ、もう一度言う。
「何者か、と聞いている」
二人の衛兵は不審者を見る目で男を観察する。
足元は少しくらいの山道でも歩けそうなブーツ、少し薄汚い感じのする
茶色のズボン、腰には帯が堅く結ばれ、少し大きめの剣が刺さっている。
軽そうな上着の上に、左むねの上・・・心臓を守るような軽装と思われる
鎧を着ている。腕の部分は、上着の袖がちぎれたように無いせいもあって
ほとんど剥き出しの素手。とはいえ左手にはガントレット(篭手)が
付いている。その体の上に乗っている頭は、その眼光は鋭く野獣を思わせる。
髪が少々手入れされていないようで、無造作に伸びて長く、肩に触れる
ぐらい。
「何者か分からぬものを通すわけには行かぬ。
それが我らの仕事だからな!」
もう一人の衛兵が、男の放つ威圧に押されまいと声に出した。
二人の兵は腰の剣を抜いた。細身の剣が月明かりを受けてキラリ、キラリと
2度輝いた。男は目を細めたが、気おされている風ではない。
「異変は、理解しておるのだえろう?」
男が異変と言うのは、化け物どもが発生したこと。
「この地上の何処かに魔界の入り口が開いた。そこから、奴らが出てきているのだ。
魔界の王が出てくれば全ては終わる。」
男は衛兵の目を見据えたまま、威圧するように言い放つ。
目を見られた衛兵の手元は震えている。もう一人の衛兵が言う。
「化け物が出たからこそ、クリアテラン城下は結界をめぐらし、
我らが守護しているのだ!」
男はもう一人の衛兵を見た。
「おぬしらが守っていようが、今決まろうとしている未来、、、
魔王の手先に殺されるという事は変わらぬ。それとも今この場で、
我が剣に散る・・・か?」
男が放った言葉は、衛兵の腰を引かせるのに充分過ぎた。
「我が名はガズナ・ガズレイ。刻が惜しい。門を開けい!」
その名を聞いた衛兵は溜まらず後ずさった。
剣士ガズナ・ガズレイ・・・その名を衛兵たちは知っていた。
「ほ、本物か?」
流れる汗が止まらない衛兵は、最高の勇気を絞って言った。
ガズナ・ガズレイを名乗った男は、左手を肩の位置まで上げた。
ガントレットの手の甲の位置に刻まれた紋章が、月明かりに照らされて
浮かび上がる。
中央に太陽を表す円、その右側に水を表す3本の波線、左側には
山を示す5個の重なり合った三角形。間違い無くそれは、隣国グワジナールの
紋章。グワジナールはクリアテランと現在抗争状態にある。化け物どもが
現れてから二国の合戦は行われていないが、グワジナールのガズナ・ガズレイ
と言えば、その敵国の最強の剣士としてクリアテラン兵士には一目置かれる
存在である。その剣士ガズナが今、クリアテラン城の門を叩いたのだ。
「王に伝えよ。ガズナ・ガズレイが来たと」
次回予告(ぉ
一人の剣士、ガズナ・ガズレイが化け物の棲む大地を旅して
敵国クリアテラン王国の王城の門を叩いた。その行動に隠された事とは?
次回、伝説に選ばれし者とは!? 第2話「伝説」 乞うご期待!!
君は、伝説の中に希望を見つけられるか?
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