13. ガバノアの地  森の都ミーグランで情報を得たニーラ一行は、「八条の地」と思われる ガバノア中央宮殿に飾られた「君の瞳」、八条の間を求めて移動を開始する。 「リディアス!」 ニーラが呼ぶと、すぐに返事をして側に歩み出る。 それを見つけ、ニーラが続ける。 「飛行呪文が使える魔法使いは居るか?」 「クリアテラン魔法戦術団の代表が3名程、今回の旅に同行しております。」 「2名に指示を出したい。」 「はっ!」 ニーラの指示に従い、2名の魔法使いを連れてきた。 二人とも白髪の髭を貯えたやや高齢な感じだが、いかにも魔法使いらしいとも言える。 「魔法戦術団所属のローン・マナ・シェイじゃ。」 「同じくザイナス・マナ・ゲイルじゃ。」 彼らのミドルネーム「マナ」は名前を示す物ではなく、魔法使いとしての階級を 示し、上級である証しだ。 「ローン、お前はクリアテラン城へ飛びモウファス殿に伝令だ。  我々は八条の地、ガバノア宮殿に向かうと伝えよ。  ザイナスは先にガバノアへ飛び、状況を確認して問題が有れば連絡を。  ミーグランの様に既に壊滅状態ってのも有り得る。  行け。」 二人の魔法使いはニーラの指示に静かに肯いた。そして、二人はシンクロしているかの 様に同じ身振りで呪文を詠唱する。 「高き空に棲む幻獣カールイノスよ、その翼で我を運べ。  魔法羽(マー・ウィー)」 背中に2個の卵のような形の白い光が膨らみはじめ、やがてそれは 白い翼となって広がった。はた、と羽ばたくとふわっと体が浮いていく。 そしてローンとザイナスはそれぞれの方向へと飛んでいった。 「さて、こっちはガバノア宮殿が無事であると信じて満月に間に合うように  行かねばならん。出発だ!」 デイルが言うと、皆が歩きはじめた。 その翌日、ローンはクリアテラン城に到着し、モウファスに報告をする。 「モウファス様」 「おお、ローンよよくぞ無事で戻った。」 「この旅、思いのほか長旅になりそうにて・・・」 「龍騎士伝説か?」 「さようと思います。化け物どもは我等よりも先にミーグランの地に攻撃を  していた様子。そして、我々が探していた石盤を奴等も探しておった。が、国王  フォーレスの機転にて敵の手にそれは渡らず、我々がうまく情報を確認した。  次に目指さねばならぬは八条の地、恐らくはガバノア中央宮殿に飾られた宝石  「君の瞳」が関係有るかと・・・」 それを聞くとモウファスは目を細め、つぶやいた。 「魔王の転生が目的か・・・」 モウファスのその言葉に耳を疑い、ローンはその目を大きく広げてモウファスを 見つめた。モウファスは何もいわず踵を返した。 「モウファス様・・・」 「陛下に申し上げねばなるまい。ローンよ、ニーラ殿に届けて欲しい物が  ある。が、陛下の許可を得ねばならぬ。しばしそこで待たれよ。」 「は・・・」 ローンの呼び止めに返事をしたモウファスは急ぎ歩いた。  ニーラ達と別れてより二日と少し経過し、ザイナスはガバノア近隣に ついたが、近寄れなかった。無数の化け物が空から、あるいは地上から攻め寄せて いる。ガバノア側も必死の抵抗を見せている。見た目互角だが、際限無いと思わせる 勢いで新手が合流する化け物共が優勢か。ガバノア軍の地上部隊は屈強な戦士で 構成されているようで、押し寄せる化け物を見事に跳ねつけている。  空中からの攻撃を試みる翼を持った化け物も、時折ガバノア城付近から放たれる 雷や光の帯びに打ち抜かれては落ちていくのだ。が、しかし見ているとたまにその 防衛線を超えて進入できてしまう化け物が増えてきているようにも思う。 やはり、数に押されてきている。 「さても困りましたな・・・  ニーラ殿に伝えに戻りたい感じじゃが、これを助けねばわしの気もすまぬ。  ふうむ。」 ザイナスは自慢の髭を人差し指で撫でた。彼のくせだ。 中空に目をやり、空を滑空する化け物の一つに目を付ける。 「化け物を我が手下とするは気が引けるが、しかた有るまい。」 魔法羽を広げ天空へと舞い上がる。 「ザイカーニス・パスラス・ル 汝の魂に深き恐怖を与えよう。  死より逃げたき者は我に従え。  恐怖服従(フイコンシール)|」 ザイナスが目を付けた巨躯の化け物は、めざとくザイナスを見つけ今にも かみ砕こうとしていたが、寸前でその動きを止めた。その化け物はザイナスに 恐るべき恐怖を感じたからだ。 「奴等を蹴散らせい。」 ザイナスの命令に背けない化け物は、仲間であろう他の化け物に突撃を開始した。 やはり味方の裏切りというのは痛手の元であるらしく、かなりの数をあっさりと 片付けてくれる。城の上の空間が広がった。 「ほほ、思うたよりやりおるわ。」 ザイナスはそこから慎重に降りていく。下には軽そうな鎧を纏い、右手に細い筒を 持った兵士が数名程、降りてくるザイナスを見上げていた。 「何者か?」 一人の兵が筒をザイナスに向けたまま、叫ぶように問う。 「クリアテラン魔法戦術団、ザイナス・マナ・ゲイルじゃ。  この異変を解明し、解決するためにクリアテラン魔法聖騎士団がガバノア  中央宮殿の「君の瞳」を目指し進攻中である。わしは、ここの状況を先に  確認するよう遣わされたのじゃが、今より防衛に参戦する。」 「なんと!!クリアテランからの援軍か?」 「援軍という訳でもないが、手伝わぬ訳にもいかぬゆえな。」 ザイナスの説明に何人かの兵士は安堵の声をもらす。当然といえば当然だが、 クリアテラン軍の実力は周知の事実であるからだ。 そんなおり、先程の化け物がドサっと落ちてきた。やられたのだ。 「何をしている! おしゃべりをする隙が有るならあいつらを撃ち落としな!」 威勢の良い女の声が響く。その声に促されるように先程までザイナスを見ていた兵士は 空を見上げ、手に持つ筒を化け物に向けた。筒がぼうっと光を放ち始め、 「撃てっ!」 という号令とともに光の矢が飛び、そして化け物を貫く。 「ほう、噂に聞く魔法砲とはこれか・・・」 ザイナスは物珍しそうに彼らの筒を見た。それを見ていた先程の女が叫ぶ。 「爺さん、下がってないと怪我するよ!!  死にたいなら別だけどねぇっ!」 一際太い閃光が彼女の持つ太い筒から迸り、まるでその閃光が意志を持っているか のように大きな化け物に向かって曲がり直撃する。悲鳴を上げた化け物の翼が片方 千切れ飛び、そのまま大地へと落ちた。 「ほほう・・・」 ザイナスは目を大きくして見入った。 「魔法砲の大筒をこうもあっさりと使いよるとは・・・」 魔法砲はその筒自体にも特殊能力が備わってはいるが、放たれる弾の素は所有者の 魔力、精神力に他ならない。その大筒で一撃を放つ為には相当に消耗すると言われる。 「撃てっ!」 彼女の号令とともに光の矢が飛ぶ。少し大き目の化け物が落ちずに突っ込んでくる。 「死に損ないがっ!! 落ちろぉっ!!」 太い光の矢が敵を撃ち抜き、化け物はその場に落ちた。 「ほっ!女子とは思えぬ技よな・・・」 ザイナスは驚くしかない、という表情で見守る。 「全く!きりがないね!!」 彼女はそう叫んで汗を拭っていた。無理も有るまい、そう見て取ったザイナスは 右手を上げて呪文の詠唱を始める。 「アバン・アバン・ディーノ・ディバン・・・」 「何!?あの魔法は!!爺さんっ!?」 彼女はこの呪文を知っているようだ。ザイナスはかまわず続ける。 「太古より燃え盛りしアルバンの火よ  巨龍となりて我が敵を焼き尽くせ!!」 ザイナスの体が赤く光ったように見えた。特に天空に向かってまっすぐ伸ばされた 右手が。 「爆炎巨龍乱舞(アルド・ラス・ド)!!」 ザイナスの右手から直径5mは有ろうかと言う火柱が昇り、その先端はまさしく 龍の頭の様に、燃えたぎる口を開いて獲物達を品定めしている。 化け物達の動きが一瞬止まる。余りにも巨大な燃え盛る龍のその姿は、各所で 交戦するガバノア兵士の目にもはっきりと見えるほどだった。 「食らい尽くせ・・・」 ザイナスが下した命令に即座に反応した炎の龍は、恐るべき勢いでその口から 化け物を次々と飲み込む。超高熱の炎で出来た胴体を通過するころには、骨も残らず 蒸発している。  さすがに化け物達は逃げ出す物が見る見る増え、やがて1匹もいなくなった。 それと同時に、ザイナスの命令を終了した炎の龍は、天空に昇るように消えていった。 「ふぅ・・・老体には堪えるのぅ・・・」 額の汗を拭くザイナスに、大筒使いの彼女が駆け寄ってきた。 「あれは!! 爆炎巨龍乱舞は協定では禁呪(タブード)のはずだ。  何故そんな危険な魔法を使ったのだ!!」 「・・・?」 ザイナスはきょとんとしている。 「あのような強い魔法が使える貴様の腕は認めるが、あの呪文がもたらす  凄惨な結果は言葉にならぬほど悲惨だ。ゆえに世界協定で禁呪とされていたはず。」 「ほほ・・・人に向けて使いはせぬよ。が、化け物相手は別じゃ。  わしの今の魔法で誰か死んだかね?」 「う・・・」 「きりのない戦いにキリを付けたのじゃ。つまりは助かったのではないかね?  魔法の良いも悪いも使方次第じゃな?」 「く・・・。」 「やがてわしの所属する部隊がここにたどり着く。  その折にスムーズに迎え入れてほしいのだが?」 「こっちに来い。」 「貴殿の名はなんと申す?」 「ガバノア魔法砲部隊"空"中隊隊長 ホノメ」
次回予告(ぉ 魔物に襲われたガバノア中央宮殿を守るため奮戦していたホノメ。 ザイナスは禁呪を用いたものの、その窮地を救った。ホノメに案内された先に待つ者は? 次回、満月の夜に何かが起こる 第14話「ガバノア中央宮殿」 乞うご期待!! 君は、伝説の中に希望を見つけられるか?


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